今週、Sencha Touch 2 が正式リリースされました。公式ページもすっかり Version 2 仕様に変わっています。
昨年10月にプレビュー版がリリースされて以来、アップデートを追いかけてきたので、個人的には目新しさよりは、なにやら安堵感(?)の方が大きい印象です。。大胆な仕様変更やデグレードに泣かされたこともありましたが、これからは安心して使えますね ;)
実際のところ、Sencha Touch は非常によくできたフレームワークだと思います。正式リリースで導入に関心を持った方もいらっしゃると思うので、半年間使ってみた感想を徒然にまとめてみました。
# 内容は、個人の見解に基づくものです。
# この記事はステマではないです。私は Sencha 社との関わりは全くありません。
Cons
初めて Sencha Touch を見た時、綺麗な UI が非常に印象的で、なにやら未来の WEB を予感させるものでした。伝統的なサーバーサイド寄りのアーキテクチャはスケールに難があると感じているので、クライアントサイド寄りでアプリを作る仕様も気に入ったポイントです。そういう意味では、当時比較していた HTML ベースの jQuery Mobile は若干古いモデルのように感じました。
とはいえ、使っていくうちに良い点だけでなく、悪い点にもいろいろ気づかされることになります。
– パフォーマンスはやはり遅い
パフォーマンス改善は Sencha Touch 2 の目玉ポイントではありますが、それでもやはり、ネイティブアプリに比べるとパフォーマンスは見劣りします。ただ、これは、Sencha Touch に問題がある、というよりは、CSS3 周りが原因のような気がします。検証のために、CSS3 のいくつかの装飾を外した CSS を適用すると、動作が結構軽くなりました。
– サイズが大きい
ライブラリのファイルサイズは結構大きいです。正式版の JavaScript ファイルは圧縮した状態でも 567KB でした。電波状況の悪いところでこの容量のファイルを受信するのは結構厳しいです。幸い、JsBuilder というライブラリのビルドツールが同梱されていてるので、利用しない機能を外してコンパイルすることで、サイズをある程度小さくできます。
– 学習コストが高い
機能豊富な裏返しとして、覚えることは結構多いです。でも Sencha 社もいろいろ対策を考えているようで、学習のためのドキュメントやビデオが非常に充実しています(※英語ですが。。)。また GUI でアプリを開発できる Sencha Designer という IDE や便利なコマンドラインツールも開発していて、フレームワークを利用しやすくするための改善を地道に続けている印象です。
悪いところを一通り挙げたので、今度はよいところを。。
Pros
– 企業が開発・サポートを行っている
なんだそれは、と言われそうですが。。ただ、まだまだ黎明期で、混沌としたモバイル WEB アプリ周辺の現状を考えると、企業がしっかりと開発・サポートを行っているのは、とても心強いです。フォーラムにあげられる投稿へのレスポンスも早く、対応も真摯で、非常に好感の持てるものでした。
– デザインが綺麗
コンポーネントは高品質で、見た目も、他のライブラリと比べて断然綺麗だと思います。また、「Sencha Touch 2 Recipes:2 オリジナルのテーマを作る」でも紹介しましたが、テーマのカスタマイズがとっても簡単です。これは Sass/Compass の力も大きいと思うのですが、それをライブラリに組み込んで提供する発想は秀逸だと思います。
– フルスタック
初見の印象通り、モバイル向けの WEB アプリを作るにあたって、機能不足を感じることはありませんでした。また、MVC アーキテクチャに則ったおかげで、メンテナンスし易いコードベースができたように感じています。便利なユーティリティ関数も充実しています。軽量ライブラリを組み合わせる発想もあるかと思いますが、フルスタックで必要な機能が揃っているのは、選定に頭を悩ませなくて助かります。
まとめ
Version 2 になった Sencha Touch ですが、ネイティブアプリと同等のユーザビリティを提供するのは、実際のところ、まだ難しいと思います(懸命なマーケティングに水を差すようですみません)。Sencha Touch に限らず、ネイティブアプリ並みの操作感をスマートフォンの WEB ブラウザで実現するのは、かなり困難なチャレンジかと。
ただ、Sencha Touch の今回のバージョンアップはそれに近づく一歩で、将来的には、スマートフォンの WEB アプリはネイティブアプリよりも主流の存在になっていくのでしょう。(と、ヤコブ・ニールセンが最近言っていました。)
そして、Sencha の開発チームは、これからもフレームワークを素敵に改善し続けてくれるはず!
最後に個人的な感想をもうひとつ加えると、Sencha Touch を使って開発するのはとても楽しいです :)
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