Posted by & filed under 開発.


先日 JavaOne 2014 サンフランシスコ報告会 Tokyo に参加したら CTO が発表していました。翌週、社内のグループウェアにそのイベント参加の所感を書きました。CTO の発表内容については、私がその内容に明るくないため触れませんでした。社内では、おおたにさんがいつも CTO をいじっているのですが (CTO は基本いじられキャラです)、それに馴染んできたのか、嘘でも良いからいじれと言われているような気がします。次回どこかで会ったらがんばって挑戦してみます。

閑話休題。アリエルでは課題/バグ管理システムの Trac を使っています。

Trac の安定バージョンがリリースされたので紹介します。

リリースノートによると、1.0.2 の修正チケットが全182件、そのうちリリースノート付きのチケットが167件とたくさんの改善が行われています。1.0.1 の修正チケットが25件であったため、1.0.2 が事実上の 1.0 系の安定バージョンだとみなすこともできます。社内では 1.0.2-trunk を定期的にアップデートしながらずっと使い続けてきました。特に問題なく、アリエルの用途では安定して運用できています。プラグインさえ対応していれば 1.0 より低い Trac バージョンからの移行に対する安心感が向上したと言えるでしょう。

リリースノートの日本語訳が公開されていたのでリンクを追加しました (2014-10-25) 。

せっかくの機会なので前回の記事からのアップデートをまとめます。

TracAutocompleteUsersPlugin のメンテナンス

以前の記事の中でメンテナンスされていないプラグインは https://github.com/arielnetworks/ にて、自分たちでパッチ管理していると少し紹介しました。その中の1つに TracAutocompleteUsersPlugin というプラグインがあります。このプラグインはチケットのフィールドの入力中にユーザー ID を補完するものです。機能的に目新しいものではありませんが、あるのとないのではチケット登録時の利便性が全く違います。Trac 本体に取り込んでほしい機能でもありますが、いまのところはプラグイン拡張となっています。

便利なプラグインですが、長らくメンテナーが不在であったため、開発は停滞し、メンテナンスリリースさえ行われていない状態でした。アリエルでもいくつか機能拡張のパッチを提案していましたが、取り込まれる様子がないためにメンテナーになることにしました。威勢よく開発に取り組むつもりはありませんが、メンテナンスは積極的にやっていこうと考えています。いまは PyPI からもインストールできるようになっています。

メンテナーになった頃のものを 0.4.2 としてリリースしていました。また最近、新機能を2つ追加して 0.4.3 をリリースしています。それらを簡単に紹介します。

任意のカスタムフィールドの補完対応

trac.ini に以下のようにカスタムフィールドのフィールド名を指定 (複数のときはカンマ区切り) すると、カスタムフィールドでも補完できるようになります。

trac-autocompleteusers-customfield1

ドロップダウンリストでのユーザー情報の表示

ドロップダウンリストであってもユーザー ID のみだと、同姓や同名のユーザーがいるとどちらなのか迷うときがあります。そんなときにユーザー情報 (例えば、姓名) が表示されると間違いが起きにくくなります。

autocomplete-for-drop-down-list

Apache Bloodhound の近況

以前の記事で Trac の新たな可能性の1つとして、Apache Bloodhound (以下 Bloodhound) を紹介しました。あれから3ヶ月ほどしか経っていないのであまり大きな動きはないようです。最新バージョン 0.7 のリリースが 2013-08-23 なので、それから1年以上、新しいバージョンがリリースされていないというのは、開発が停滞しつつあると言えるかもしれません。

メーリングリストで Bloodhound の開発状況についてどんな感じか聞いてみました。

回答してくれたのは Trac のコア開発者でもある Ryan Ollos 氏 (以下 Ryan 氏) です。彼は Bloodhound のコミッターでもあるようですね。やり取りの内容を要約します。

  • マルチプロジェクトサポートについて

Trac 1.1.x (⇒ 1.2) でやろうとしているマルチプロジェクトは Multiple-Project, Multiple-Environment な戦略でやろうとしている。Bloodhound のマルチプロジェクトは Multiple-Project, Single-Environment で実現している。プロジェクト毎に DB を分けるか分けないかの違いがあるそうです。Ryan 氏自身は Bloodhound のマルチプロジェクト機能を Trac に backport したいそうですが、まだ具体的には何も決まっていないようです。

  • Trac と Bloodhound の関係は?

Ryan 氏は、もっと密接にして Bloodhound で導入した機能を Trac に backport していきたいと考えています。Bloodhound は Trac ベースのプラグインでしかないし、今後もそうあるように彼は考えています (fork しない) 。

開発者のメーリングリストの流量も減っていてやはり活発とは言えません。この3ヶ月であったことは GSoC を3件受け入れていたことぐらいかなと思います。これ自体は立派なことだと思います。

いまの状況をみる限り、Apache の top-level プロジェクトであっても開発者を確保するのは容易なことではないようにみえます。せっかく良さそうなものを作ったので、せめて upstream (Trac 本体) へ成果をマージするところまでがんばってほしいなと思います。


関連文書:

One Response to “Trac 1.0.2 リリースとその周りのことを少し”