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 この本は、行動経済学の権威であるダン・アリエリーによって、行動経済学のなんたるかを、いくつかの事例を用いて紹介をしている。

 本書で紹介されている行動経済学の概説について。いくつかの実例を含めたダン・アリエリー氏本人によるプレゼン動画が youtube に上がっている。

http://www.youtube.com/watch?v=JhjUJTw2i1M

 おおまかに言うと。
 (経済学の観点から見ると)我々は経済活動やそれに類する活動を行う際、経済合理性に則ったある種の費用便益分析を行い、論理的に判断し行動すると考えられている。
 だけど(行動経済学の観点から見ると)実はそんなの嘘っぱちで、全然合理的じゃない行動をたまにするという。それも、誤差やエラーといって履き捨てる事の出来ない規模で。更に面白いのが、これら非合理的な行動が、ある規則性を持っていると言う。

 前者は、何か基本となる原理・原則を定義して、そこから諸処の数学的(機械的)な技法を用いて妄想を膨らせて数々の定理(コンポーネント/モジュール)を編み出す、計算機科学的な考え方であるのに対して。
 後者は、何か現象(木からりんごが落ちる様子とか)を観察して、何かしかこの現象の背景に共通して存在する法則があるのではないかと予測して、諸処の実験を繰り替えして、この現象を説明する自然科学的な考えをしている(ように見える)。

 つまりこの本は。我々の行動には、経済学の常識では測れない(不合理)な行動がままあり、そしてそれらはある種の規則性があると言っており、いくつかの実験を通してその法則性を紹介している。

 では。どのように不合理であり、またどのような規則性があるか。
 動画でもいくつかの例が示されているが。いくつか他の例を挙げると。

 何故、レポートや執筆作業を期限ギリギリまでやらないのか。
 何故、1万円で売られているガラケーを買わないあなたが、数万円で売られている iPhone や android 端末を買うのか。
 何故、2,000 円以上のランチを食べないあなたが、4,000 円のディナーを食べるのか。
 何故、時給 5,000 円以上稼げる優秀なデベロッパーがコミュニティで活動するのか。
 複数人でランチに行った際。何故敢えて、他の人と違う(または同じ)注文をするのか。
 ある店で 300 円のカレーと 900 円の旨いカレーを出す店があり、毎回 900 円の旨いカレーを注文するあなたが。ある日、カレーの値段が無料に、旨いカレーの値段が 600 円になったとき、どちらを注文するか。

 といった事がある。どれも、経済学的な観点(我々が十分に冷静で論理的な思考が働く状況)では、首を傾げたくなる内容ではないだろうか(もちろん屁理屈を捏ねて説明もできるが)。更に、これらの非合理的な行動は、上述の規則性が見られる。
 本書では、このような不合理な行動を我々が行うという事と、これらの行動がある程度予測可能であるという事を、諸処の実験から結論づけている。

 特に、自分の心に刺さった内容として。
 3章の「ゼロコストのコスト」等で繰り返し紹介される不合理な行動の予測からは、いわゆるマーケティング的な行動を行う上で、かなり有用であると感じた。つまり、誰か(もしくは特定の誰か)に対して、有用な価値がある(ように見える)モノを提供する上で、氏が提唱する行動経済学の規則性は、非常に参考になった。
 また4章の「社会規範のコスト」では、自分のような何か物事を(命令する立場ではなく)お願いする立場の人間において、様々な立場・関係の助力してくれた人間に対して、どのような方法でこれに報いるべきかという、人材マネジメントのヒントが見えてくる。
 更に11章の「品性について」では、どのような状況下で、どの程度の不正を働き、またこれをどのようにして防ぐのかという、ある種のリスク・マネジメント的な話が(立場的にリスクを引き起こす可能性がある側の人間として)とても参考になった。


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