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今年のゴールデンウィークにIBM Impact2013に初参加しました。3ヶ月以上も経過しています。今ごろ報告ブログを書きます。

公式情報は下記URLからたどれます。もっとも、このURLでは来年Impact2014に置き換わってImpact2013の情報が探せなくなりそうです。

http://www.ibm.com/impact

IBMのサイトは昔から「変わらないURL」に対する意識が低いので困ります。ティム・バーナーズ=リー言うところのクールURI(“Cool URIs don’t change”)のかけらもありません。意識と言うより、使っているシステムのせいかもしれませんが。と言うのも、IBMサイトで裏にNotesを使っている場合のURLの醜さは救いようがないからです。上記URLの先は裏がNotesでは無さそうなので、少しマシなようです。

IBMの反クールURIの件は10年ぐらい前から文句を書いているので、今日はこれ以上書くのはやめにします。

今回、初のラスベガスでした。

行く前に、空港にもカジノが置いてあると聞いていました。なので空港での驚きはありませんでした。しかし、ホテルに入った時の目の前の景色は想像以上でした。フロアの大半がカジノです。片隅にあるフロントを探すのに苦労したほどです。カジノを薄着の女性たちが闊歩しています。酒なのか薬なのか知りませんが全般的にフラフラ歩いています。そして場全体が葉巻の煙でもうもうとしています。ホテルに入って早々、場違いなところに来てしまった感が満載でした。なお、滞在中、昼間のラスベガスも歩きましたが、燦々とした日差しの下、健全そうな家族連れが大挙して街を歩いています。昼と夜があまりにも対照的な街です。

ラスベガスの話はさておき、IBM Impact2013の話です。

クラウド、モバイル、ソーシャル、ビッグデータの4キーワードの連呼です。と言っても、このキーワード自体に驚きはありません。オラクルもHPも同じキーワードを並べています。何かにフォーカスするでもなく、全部同じように並べてしまうのがIBMらしい、というぐらいでしょうか。

少し驚いたキーワードの連呼はSOA(Service Oriented Architecture)です。日本にいるとSOAは少し前のバズワードで死にかけの印象があります。IBMの中ではSOAは死んでいないようです。会場に設置されている書籍コーナーを覗くと、SOAとタイトルのついた書籍が多く並んでいます。後日、過去のImpactに参加した人に聞いてみると、例年より今年はSOAの印象が強いと言っていました。IBMによると、モバイルの時代なのでSOA復権らしいです。理屈はわかりません。

製品の主役はWebSphereブランドです。IBMで壇上にあがる偉い人たちは軒並みWebSphere担当なんとかという肩書きです。ただ、そもそもImpact自体が元々WebSphere系列のイベントらしいので(たとえばDB2関連のイベント、Notes関連のイベントは別にあります)、単にそれだけの理由だと思います。

個人的には、アプリケーションサーバとしてのWebSphereに良い印象はありませんが、世間的には昔よりだいぶマシになったという評判のようです。今回、やたらとWebSphereが軽い速いとアピールしていました。WebSphere Libertyは起動が速いと言い張っていました。Java EE6のWeb Profileだからです。本当かどうか知りませんが、昔のWebSphereよりはたぶん速いのでしょう。

ところで、IBMのJavaあるいはJava EEに対するスタンスは微妙です。と言うのも、今やJavaはオラクルのものだからです。今回のImpact2013の一部のセッションでも、Polyglotという名目でJava以外の選択肢も考えたほうがいい、と受講者に訴えていました。そのセッションでIBMが推したのがNode.jsでした。この選択は意外でした。意外でしたが、Node.jsがサーバサイドJavaの置き換えになるのは考えづらいので、IBM的にもJava依存を脱する具体策はまだないようです。しばらくはWebSphereより上のレイヤで勝負するつもりのようです。

WebSphere以外で目新しくアピールされていたのは、モバイル開発基盤のWorklight、プライベートクラウドのSmartCloud Enterprise通称SCE、垂直統合基盤のPureSystemsです。WebSphereがアプリケーションサーバ以外の周辺システムを含むブランドになっているのと同じように、モバイルまわりはWorklight、クラウドはSCE、垂直統合のハイエンド機はPureシリーズとしてブランド化されつつあります。

今回、Worklightが目立っていました。前年買収されたばかりの新顔が大出世です。WorklightはApache Cordovaをベースにサーバ側の管理機能や開発環境などを作り込んだ製品です。Cordovaに馴染みがない人も、AdobeからASFに寄贈されたPhoneGapのオープンソース版と言えば、なるほどと思うかもしれません。Cordova(PhoneGap)はハイブリッドモバイルアプリを作るための基盤技術です。

モバイルアプリの開発方法は、HTML5ベース、ネイティブ、ハイブリッドの3種あり、その中でハイブリッドが正しい選択だというのがIBMの言い分です。同じ主張を以前、アシアル社の田中さんからも聞きました。アシアル社のMonacaとIBMのWorklightは同じCordovaベースで、似た戦略の製品です。ちなみに、IBM曰く、WorklightはMEAP(Mobile Enterprise Application Platform)という分野の製品です。

日本IBMの人からもWorklightいいよと散々売り込まれていますが、今のところ、自分はHTML5ベース派です。

WorklightのクライアントサイドJavaScriptのライブラリのデフォルトは(IBM推しの)Dojo Toolkitライブラリです(オプションでSencha TouchとjQuery Mobile)。IBMはやたらとDojo推しです。自分のまわりで使っている人を知らないので出来がわかりません。

垂直統合のPureシリーズは筐体も見ましたが、Oracle Open Worldで散々Exdataの筐体を見慣れてしまったので特に何も感じませんでした。ハードウェアやソフトウェアのスペックを聞いてもあまり頭に入ってきません。想像力が足りないせいかもしれません。

IBMのクラウドの基盤はSmartCloud Enterprise(SCE)です。日本ではSmartCloudの商標をNTTに取られてしまったため、SmarterCloudにせざるをえなかった悲しい歴史があるSCEです。

IBMがSCEのIaaS基盤として使うのがOpenStackです。

行く前から知っていましたが、IBMのOpenStackへの力の入れ様は想像以上でした。Impact後、日本でHPのイベントにも参加しましたが、HPのOpenStackへの入れ込み方も相当なものでした。かつて対Windowsのため、敗者の大手ベンダー(大手ですがマイクロソフトにこてんぱんにやられたベンダー連中)がLinuxに集結した動きを思い起こさせるようなOpenStackへの集結です。今回の敵はもちろんAWSです。アマゾンにやられまくった大手ベンダーがOpenStackで巻き返しをはかる構図です。御大のストールマンがOpenStackをGNU/OpenStackと呼べと言い出したらこの構図は完成すると思っています。

最後に、今回のImpactの収穫のひとつがGrady Boochの講演を聞いたことです。UMLには一言たりとも触れませんでした。Booch自身が出演の面白くないビデオを上演していました。本人が楽しそうなのでそういうものなのでしょう。


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