肥料かも
痩せた畑では豊作は期待できない、ということで、時々、肥料が欲しいと思ったりもします。
で、しばらく前に読んだ本に、いいことが書いてありました。
斉藤由多加著「ハンバーガーを待つ3分間の値段」という本で、「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載されていたそうです。私は、連載のことも著者の斉藤さんという方のことも知りませんでしたが、斉藤さんは高名なゲームクリエーターとのことで、ゲーム「シーマン」の生みの親だそうです。
ゲームクリエーターだけに柔軟な思考が開陳されているのですが、特に印象に残った内容をいくつか、自分の思考が豊かに実るように肥料として撒いておきましょう。
「見えないものには名前をつける」
人は名付けられないとその存在を上手く認識できない、だから重要なことや人に印象づけたいことには必ず名前をつけるべきである、ということを斉藤さんは、シーマンの開発段階でのエピソードを通して述べています。
ゲーム内でシーマンが同じフレーズを繰り返してしまう現象を「バンテリン現象」と名付けて、問題の発生を開発チーム内で共有し易くしたというエピソードです。
「正確とリアル」
人間にとってのリアルとは認識にとってのリアルであって、事実の正確性とかならずしも一致しない、時にはデフォルメされたり、情報量を縮退させた方がリアルだったりする、ということを斉藤さんは、航空写真と略図の比較を通して述べています。
「お金で買えるもの情報でしか買えないもの」
貨幣価値には置換できず、情報の物々交換でしか成立しない経済活動がある、その活動基盤となる「場」を提供するサイトがWebでは生き残っている、ということを斉藤さんは、リクルートの「住宅情報」の威力なども交えて述べています。
「問題のすげかえ」
同じ現象、事実に対して、どう認識させるか、その誘導の仕方で受け止められ方は全く異なる、ということを斉藤さんは、シーマンの未熟な音声認識技術の問題を解決したエピソードを通して述べています。
このエピソードは特に考えさせられました。シーマンで使っている音声認識技術は未熟であったため、プレイヤーが話した内容を上手く認識できないことが多々あり、当初は「もう一度、言って」という感じでシーマンが聞き返すという手段を取っていたそうです。
ただ、この対策は、何度、言い直しても、「もう一度、言って」とシーマンに繰り返されるという事態にもつながり、プレイヤーが白けてしまいかねません。そこで、斉藤さんは、認識できない場合にはシーマンが逆キレしてプレイヤーを非難するという発想の転換を行いました。
その結果、責任転嫁されたプレイヤーは、シーマンに対して怒ることも、それまでのように興味を失うこともなく、逆にプレイヤー側で気を使うようになった、という実に感心させられるお話です。
なんだか、色々と考えるヒントになりそうなんですが、まだまだ収穫は先かもしれません。実りの秋が待ち遠しいです。
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