「ロボットにつけるクスリ」を読みました
会社の本棚にあった「ロボットにつけるクスリ」を読みました。 他に読む予定の本が積み残っているのに、簡単そうな本に手が伸びました。
AI(人工知能)に始まり、ニューラルネットワーク、GA(遺伝的アルゴリズム)、AL(人工生命)、複雑系、VR(仮想現実)、と20世紀の心暖まる物語が語られます。 アリエル技術者の中心世代にとって、まさに青春です。末席ながら浸かっていたひとりとしては、懐かしい本です。もっとも、今何が残っているのかを考えると、少し虚しくなるのも事実です。
本の中盤以降、進化論的アプローチに対する楽観的すぎる態度に、どうなんだろう?、と思わずにはいられません。そう言うと、夢が無い、と著者に怒られそうですが。
うまく問題の解き方が分からないけど、進化論的に淘汰を繰り返せばうまく行く方法論が見つかるはず、という幻想は、インターネットのCGM(Consumer Generated Media)の幻想に似た危うさを感じます。良いコンテンツの作り方は分からないけど、人を多数集めてコンテンツを淘汰させれば、良いコンテンツができるはずだ、という考えです。
進化論的アプローチやCGMを否定する気はありません。予測可能なように語られることに対して懐疑的なだけです。巨視的に見れば、淘汰によって何かは残り、何かは消えます。生き残ったモノが優れているかを問うのは愚問です。
本の後半、FPGAをやけに熱っぽく語り始めます。読んでも、ソフトウェアの書き換えと本質的な差を感じられませんでした。ぼくの感受性が低いのかもしれません。
FPGAを例にした未来予測で、自分好みに適応進化するハードやソフトが出てきます。
今風に言うと、パーソナライズが近いかもしれません。しかし、ぼくはこの「パーソナライズ」という言葉があまり好きになれません。理由は、1年前(http://dev.ariel-networks.com/blog/inoue.php?blogid=2&archive=2005-9-19)に書いた、「ポータル」という言葉の裏に潜む理念が嫌いなのと同じです。「パーソナライズ」と聞くと、ヤフーなどがサイトにユーザをつなぎ止めるために使う姑息な手段、という印象があります。 基本的に、ぼくはヤフー的なものが嫌いなのかもしれません。ユーザを一箇所につなぎ止めて動けないようにしたがる戦略に抵抗があります。
# 言うまでもないですが、好き嫌いと良い悪いの価値判断は別物です。念のため。
パーソナライズの代わりの言葉を探して、「調教」という言葉を使うことにします。「学習」や「適応」より頭が悪そうですが、今のソフトウェアにはこのぐらいの方が適当です。AirOneも学習するほど頭は良くないので、「調教可能」にするのが最初の一歩です。
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