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Notes8の話

IBMで、Lotus Notes8の話を聞いてきました。

受付が顔見知りだったので顔パスかと思いましたが、しっかりと名刺を取られました。

講師はJeff Eisenです。 http://dev.ariel-networks.com/Members/inoue/notes-developer-jeff の人です。後で、ぼくのことを覚えていますか、と尋ねたら、見た覚えがある、と答えてくれました。社交辞令かもしれません。7年前に会った日本人の顔なので、覚えてなくても仕方ありません。

Jeffが英語で話し、ひと区切り付けて話を止めると、通訳の人が日本語に翻訳します。通訳の人、見たことある人です...。通訳は素晴らしいものでした。

午前と午後のセッションがあったのですが、ほぼ同じ内容を午前は概論的に、午後は深く、という構成でした。午後だけ出席すれば良かったです。こういう構成を知らなかったので、貴重な睡眠時間を奪われました。

話はDominoではなく、あくまでNotes8の話です。知らない人のために説明すると、Dominoがサーバ、Notesがクライアントです。

Notes8はEclipseベースになるという発表が2年前にあり、話題になりました。あの巨大なコードベース(基本的にC++)をJavaで書き直すのはムリだろうと思っていました。この辺は何度も質問されたのだろうと思います。Jeffのプレゼンにしっかり答えが用意されていました。結論から言うと、Notesのコードベースを全てJavaで書き直すようなバカげたことはしていません、がJeffの答えです。では、何がEclipseベースなのかと言えば、メール、カレンダー、アドレス帳のそれぞれのクライアント機能のGUI部分をJavaで再実装した、のが実体のようです。

Javaで書かれたGUIはデモマシンではキビキビと動いていました。見た目も綺麗です。かつてのちょいダサなNotesの面影はありません。しかし、後で非公式に聞いた話では、メモリが1.5GBでも結構動作が厳しいとのことです。まあ、Eclipseの重さを見れば推して知るべしです。

皮肉ではなく、Eclipseの拡張可能なアーキテクチャは良くできているように思います。もちろん、Eclipseの専売特許ではなく、EmacsもFirefoxも似たように拡張可能なアーキテクチャです。上から下までJavaで書けるEclipseと、Emacs LispやJavaScriptを使うアプローチの違いはあります。個人的には、複数のプログラミング言語を組み合わせるデメリットを結構感じるので、Eclipseのアプローチは悪くないと感じます。

Eclipseの拡張機能の流儀でNotes8を拡張する説明で、検索ボックスを拡張したり、サイドバーに機能を追加したりとあります。Firefoxの拡張機能みたい、というのが最初の感想です。あらかじめ定義されたExtension Pointsにプロパティを設定することで、コードを書かなくてもそれなりに拡張可能、という売りです。そして、Javaでコードを書けば、クライアントに機能を追加することもできます。例として、Notes文書ごとに自分メモ(いわゆるアノテーション)を書く拡張機能を挙げていました。書いたアノテーションはローカルストレージに保存されるようです。こういう機能を基本機能ではなく、拡張機能として提供できるのは強みです。ちょっとしたアイディアをいちいち基本機能として実装していくと、訳の分からない機能セットになってしまうからです。

以前(Notes4.6)から、JavaでNotes DBにアクセスできました。文書データを取得したり加工したり、メールを送ったりできました。今回のNotes8のJavaの意味は、NotesクライアントのGUI自体を色々とJavaで拡張可能になる部分だと感じました。

IBMの目論見は、Notesの拡張機能を作るコミュニティを作ることです。テーマ機能などは別として、ちゃんと動くGUIを作るのは難易度が高いです。なぜなら、基本的に非同期的な思考を求められるからです。最近、少しYahoo! Pipesを見ましたが、データを一方向に流す加工処理を考えるだけのYahoo! Pipesの簡単さに比べると、難易度の差が際立ちます。

Notes8.0.1の計画にiCal subscribeがありました。たぶん、マルスケ http://www.ariel-networks.com/airone/ のマネです。

Notesの存在意義はなんだろう、と考えました。昔、「スキーマ不定のXMLをRDBに放り込む」 http://dev.ariel-networks.com/blog/inoue.php?blogid=2&archive=2005-10-13 から、XML-DBを否定(RDBを肯定)する記事(IBM)にリンクしました。

リンクが見事に切れています。偏見かもしれませんが、IBMのサイトはリンク切れが多い気がします。ビジネス上の理由から、記事が抹消されたのかもしれません。

RDBに対する立ち位置では、XML-DBとNotesには似た点があります。(RDBが得意な)集約機能に関してNotesが弱いのは事実です。では何が強みなのかと言えば、メッセージング機能なのだと思います。ただのメールクライアント(MUA)と呼ばれるのは、Notesにとって屈辱的かもしれませんが、メールのユーザビリティこそがNotes8の成否を分ける部分だと思います。MUAとしてNotesを受け入れれば、Notesは今でも良い選択です。受け入れられなければ、たぶん悪い選択です。Notes8のメールのGUIが、リッチさでファンを増やすか、重さでファンを失うか、大きな分岐点です。

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