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妹の力と現代ソフトウェア開発事情

先週、社内で素晴らしい場面に遭遇しました。茨城出身の娘さんが、会社のとても偉くて恐い人をあごで使って指示出しをしていたのです。

柳田国男の論文に「妹の力(いものちから)」というものがあります。この文脈の「妹(いも)」は、血縁関係のある妹ではなく、(若い)女性一般を指す言葉と言われています。もっとも、実際に論文を読んでみると、血縁関係のある兄と妹から話は始まっていますし、紹介される伝承も血縁関係のある妹の話が多いです。

論文は、柳田国男が最近聞いた話(柳田国男にとっての最近なので、おそらく昭和初期)から始まり、伝承を織りまぜ、女性抑圧の因習や慣習から、女性解放の流れに至ります。ただし、女性解放を短絡的に表層的に見るのではなく、因習や慣習をもたらした歴史や本質に目を向けよ、と説きます。柳田国男の言葉をそのまま引用すると

全体から見て其時代の、どうしても必要だと認めたものが慣習と為り、之を破れば一般の不安を感ずる間は、人は之を守らざるを得なかつたのである。人間の智慧には不確かなものが多い。此不安を追払ふことは容易で無かつた。

祭祀祈祷の宗教上の行為は、もと肝要なる部分が悉く婦人の管轄であつた。巫は此民族に在つては原則として女性であつた。

故に女の力を忌み怖れたのも、本来は全く女の力を信じた結果であつて、あらゆる神聖なる物を平日の生活から別置するのと同じ意味で、実は本来は敬して遠ざけて居たもののやうである。

自然に対峙することに比べれば、ソフトウェア開発は、相対的には制御可能で予測可能な世界です。自然と比較してしまえば、感じる不安など無いに等しい世界です。しかし、ソフトウェア開発だけを取り出して見れば、そこには制御不能性と予測不能性の不安に満ちています。ある一定規模以上のソフトウェアであれば、リリース直前に、バグはまったく無いと安心しきれる開発者はいないはずです。最善を尽くした最後に必要なのは、妹の力です。巫女による祈りです。祈りで現実は変わりませんが、信じる人は、祈りによって心の平安を得られるからです。

最後に、柳田国男が東北の田舎で聞いたという伝承が面白いので、引用します。六人の兄弟(妹とその兄五人)が、一時に発狂をしたという話です。

不思議なことには六人の狂者は心が一つで、しかも十三の妹が其首脳であつた。例へば向ふから来る旅人を、妹が鬼だと謂ふと、兄たちの眼にもすぐに鬼に見えた。打殺してしまはうと妹が一言謂ふと、五人で飛出して往つて打揃つて攻撃した。
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