「プログラミングの心理学」を読みました
「プログラミングの心理学」
この業界でワインバーグは一種のブランドで、ワインバーグの本を理解できない奴は本質的な思考のできない奴だとレッテルすら貼られかねません。 白状すると、ぼくは過去、ワインバーグの本を読んでそんなに感銘を受けた記憶がありません。読む前の期待値が大きすぎたせいかもしれません。読んで感動した記憶が無いのです。内容もまったく覚えていません。
今回も、名著と呼ばれるだけに期待しすぎたかもしれません。それほどでも無い、というのが率直な感想です。部分部分で面白いところもありますが、全部読む必要は感じません。
一番面白いと思ったのが、プログラマに向く性格と向かない性格を分析した章(8章)でした。ちなみに、8章全体としての結論は、プログラマに向いた性格を判定できる単一の指標は存在しない、です。ありきたりですが。
ワインバーグが考えたプログラマに向く性格分析として次のようなものが載っています。
- 一週間以上の緊張状態に耐えられる能力
- ある程度急速な変化に適応する能力
- 多少ともきれい好きであること
- 少しばかりの謙虚さを持ち合わせていること
- 自己主張、性格の強さ
- ユーモアのセンス
最初の、緊張状態に耐えられる能力は、共感できないでも無いですが、プログラマ固有かと言われると疑問です。どんな仕事でも多かれ少なかれ緊張状態を伴うと思うからです。次の急速な変化に適応する能力も同じです。この業界だけが特別に変化が速くて、他の職業とは違うと主張するのは、自意識過剰な特権意識を表明しているようでぼくは嫌いです。
きれい好きの部分は、並んだ性格特性の中でも一番目を引くのではないでしょうか。世間一般のプログラマの印象とかけ離れているように感じるからです。本書の中でも、きれい好きの意味は身なりのことを言っているのではない、と断っています。では何かと言うと、コンピュータは膨大な紙類を生産するのでそれを整理できないとやっていけない、と書いてあります。この部分、昔とはだいぶ事情が違います。今やプログラマはソースコードの印刷などしないからです(まともなエディタを使える限り)。
紙類の整理の必要が無くなっても、少し違う観点でのきれい好き、つまり、自分の中にある(もしかしたら他人には窺いしれない)規律でモノを整理しなければ気がすまない気質は、プログラマにとって重要では無いかとぼくは思っています。かつて冗談混じりにマイクロソフトの社員の一定数はアスペルガーだと揶揄(?)されたことがありますが、アスペルガーの一部の人は、規則性への異常関心を持つと言われています。そういう規則性への執着はプログラマに向く気質のひとつだと思います。
謙虚さと性格の強さは、本の中でも相反する特性と書かれています。謙虚さが無いと、自分のバグを認めることができませんし、新しいことを学ぶことができません。一方で、本書にもあるように、プログラマの仕事は現実の泥臭さの中で物事をやってのけることです。本書の表現を借りれば、物事をやってのけるには、ときには邪魔物をよけて通ったり、乗り越えたり、いっそのこと叩きのめしたりすることが必要です。そんな性格の強さが必要です。謙虚さと強さの共存は、Larry Wallの言う三大美徳に通じるものがある気がします。
最後のユーモアのセンスはどうでしょう。ぼくが確かに言えることはrmsのユーモアのセンスが素晴らしいことぐらいです。
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