2006/06/05
素直な態度
前回の記事で「デザインの「悪い方がよい」原則」に言及しました。
ぼくはこの手の逆説的なアフォリズムが好きで、良く使います。しかし、そういうひねくれた論理をそのまま受け取ることはありません。ひねくれた視線をそのまま受け入れないという意味で、ぼくは素直な性格です。
ぼくの想像力が乏しいだけかもしれませんが、世の中でそう不思議なことが起きるとは思っていません。不思議なことを聞けば、ぼくは先に人間の方を疑います。不思議でもないことを、人間の方がおかしな見方をしていることの方が多いからです。誰かが意図を持って行う錯誤もあれば、そうあって欲しいという欲望が見せる錯誤もあります。ITの世界では、前者のまやかしが多い気がしますが、他の世界でも同じかもしれません。
「悪い方が良い」は、悪い設計のソフトウェアほど流行り、完全な設計をしたソフトウェアほど流行らない、という因果関係を示唆します。しかし、流行らなかったソフトウェアほど、設計の完全さに逃げ込む(言い訳にする)、と見ることもできます。因果関係が逆という可能性です。
もうひとつ別の見方もあります。流行りもせず設計も良くなかったソフトウェアは、そもそも世の中に残らないので、誰の記憶にも残らない、という可能性です。仮に、ソフトウェアを流行る流行らない、設計が良い悪いのふたつの評価軸で分類すると統計的に「設計が悪い方が良い」という結論が得られたとします。その場合でも、分類対象自体に既に偏りがあったのではないか、という疑いです。
どの説明が正しいと主張する気はありませんが、説明よりも事実そのものに目を向けることが大事です。
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