JavaOne/Oracle OpenWorldレポート - ラリーエリソン編 -
2010/9/19(日)から9/23(木)にJavaOne/Oracle OpenWorld2010に参加しました。
参加費は日本オラクル持ちです(http://dev.ariel-networks.com/Members/inoue/summer2010)。図々しいですが、来年も日本オラクルには参加費用を出してほしいので(できれば飛行機代とホテル代も)レポート記事を書きます。
長くなるので何回かに分けて書きます。客観的で公平な記事はプロのジャーナリストに任せて、このブログでは偏向した意見や個人的な感想を織り交ぜて書きます。時系列でのレポートではなくトピック単位です。今日はラリーエリソン編です。
なお、英語力と記憶力のため間違いがあるかもしれないので、間違いを見つけたら指摘してください。
ラリーエリソン(以下エリソン)はオラクル創業者にしてCEOに君臨する王様です。次のキーノートスピーカの紹介ページ(http://www.oracle.com/us/javaonedevelop/keynotes-144366.html)を見ても王様ぶりが分かります。
エリソン以外の人のBiographyは、いつどんな会社でどんな役職についたなどの真面目な経歴ですが、エリソンだけはこんな経歴です。
Larry Ellison has been CEO of Oracle Corporation since he founded the company in 1977. He also races sailboats, flies planes, and plays tennis and guitar.
もう少し書いてくださいと言える人はいないのでしょう。ついでに今回のエリソンのスピーチは時間オーバー(1時間近く)したのですが、誰も何も言えないのでしょうか。
今回、エリソンは2回キーノートスピーチがありましたが、2度ともスピーチ会場のMoscone Northに入れませんでした。入ろうとしたらそのバッジでは入れないと警備員に止められました。結局、2度ともスクリーンでスピーチを見ることになりました。他のキーノートで会場入りを止められることはなかったのでエリソンだけが特別でした。エリソンは現人神でした。
日曜のWelcome Keynoteと水曜のOracle Keynoteの2回のキーノートですが、未だになぜ2回似たような内容で話したのか謎です。おまけに2度のスピーチの出来はまったく別物でした。日曜のスピーチはあまり元気がなく、話しながら息が切れている感じでした。登場時に階段を上がっただけで息が切れたのかと思うほどでした(もういい年だし)。スライドが切り替わってから何を話すか考えているような雰囲気すらしました(これは少し言い過ぎかもしれませんが)。スピーチ前に流れたAmerica's Cup(ヨットの大会)優勝時の興奮したエリソンの顔と、キーノートのやる気のなさそうな顔を見ると、もう業界にビルゲイツもいないし、オラクルのCEOも飽きてきて引退時かもしれないと邪推するほどでした。
しかし、水曜のエリソンはノリノリのスピーチで別人でした。未だに2回のギャップと2回似た内容のスピーチをした理由が謎です。日曜のスピーチが水曜の予行演習だったのかと思うほどですが、もちろんそんなことはないので、不思議です。
Exalogic Elastic Cloud(以下Exalogic)というSun由来のハードウェアの話が多かったです。この前段としてクラウドとは何かという話から始めたのですが、salesforce.comをこけおろしていました。オラクルとアマゾンでクラウドを定義して、VirtualizedとElasticがクラウドの本質と決めたようです(なんでオラクルとアマゾンがクラウドを定義する権利を持つのかというツッコミはなしです)。Amazon EC2はクラウドだがsalesforce.comはクラウドではなく、単なるan application on the internetにすぎないと言ってのけました。
水曜にもsalesforce.com攻撃は続きました。salesforce.comの売りのマルチテナントを15年前の時代遅れの技術と言って、切って捨てました。マルチテナントはセキュアではないので、分けた方がいいとエリソンは言っています。10月にマークベニオフ(salesforce.comのCEO)が日本に来るので、エリソンがマルチテナントは15年前のold technologyだと言ったことの感想を誰か聞いてみてください。
オラクルとsalesforce.comの親密さは謎です。Oracle World展示会場でひときわ大きなブースを確保しているのがsalesforce.comです。マークベニオフは今回のOracle Worldに来てスピーチもしています。このふたり師弟関係と言えば師弟関係です。エリソンのスピーチでマークベニオフいじりも結構あったので、仲がいいからこそsalesforce.com攻撃ができる間柄なのかもしれません。
Exalogicの直接の比較対象はIBMのハードウェアでした。水曜のスピーチではDellのマシンをたくさん使うsalesforce.comも言及していました。IBMもDellもOracle World展示会場で大きなブースを構えていますし、マイケルデル(DellのCEO)はスピーチにも登場しました。今やオラクルはハードからソフトまでなんでもやるのでどこでも誰とでも競合します。それでいながらHPもDellもIntelもスピーチに登場するという協調ぶりでなにがなんだかという感じです。
ただひとつMicrosoftへの対抗意識がまったく無いのが逆に際立ちました。聞き逃しでなければひとことの言及もなかったと思います。無視することで眼中にないことを暗に示したのでしょうか。
ついでに言うとエリソンが多く語ったものはExalogicとLinuxとFusionです。逆にほとんど話さなかったのがJavaとSolarisです。これが何を意味するのか...
Sunを買収してExalogicのようなハードウェアを手に入れ、SolarisとLinuxというOSがあり、昔からあるデータベースなどのミドルウェア、とオラクルは上から下まで揃って持つことになりました。スピーチの中でもハードウェアとソフトウェアを一緒に提供できるメリットを強調していました。このメリットの補足としてスティーブジョブズの言葉も引き合いにだしていました。
Exalogicはハードウェアに合わせて完全にチューニングしたソフトウェアなので性能が良いし(テストも充分にできるので)安定すると主張します。これは事実だと思います。でも、この主張、SunでもIBMでもHPでも彼らのUnixで長年飽きるほど聞いてきました。これらのUnixに何が起きたかというとWindowsとLinuxによる駆逐です。いわゆる垂直統合の敗北です。
ITの世界の垂直統合の敗北は歴史的必然だという主張に対して、必然と言えるほどの歴史はない、という反論があります。確かに歴史は実は短いものです。たまたまMicrosoftがうまくやっただけでハードウェアを持っていた会社は戦術が下手だった、垂直統合が敗北の本質的理由ではない、という主張も可能です。
しかし、個人的な意見では、垂直統合は敗北の本質だと思っています。つまり何度戦っても垂直統合はオープン技術の前に敗北すると思っています。短期的には垂直統合が圧倒的な性能差でリードしても、時間が経てば安い量産品が性能差を埋めると思うからです。
日本オラクルに参加費を出しておいてもらっておいてなんですが、Exalogicのような垂直統合はオラクルの終わりの始まりかもしれません。
LinuxとFusionの話はまた別の機会に気が向いたら書きます。
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