井上

「どの辺が未踏ですか?」に対する大人の対応

問題発言を含むので、続きに本文を記載。


京都でIPA未踏ソフトウェアのキックオフミーティングがありました。
未踏ソフトウェアともなると、「それのどこが未踏なんですか?」という辛辣な疑問や批判がでます。
「未踏なソフトウェアがそんな簡単に生まれるわけでは無い」、と開き直りたくもなります。が、そこはそれ、大人の対応というものがあるようです。キックオフミーティングでも、年取った人(じじい?)ほどうまい対応(言い訳)をしていました。
見てて痛々しい若者もいたので、大人の対応を考えてみました。

京都でのキックオフミーティングでも見られた、いくつかの対応を見ていきます。

その前に基本姿勢について。
対応(言い訳)する時に重要なことは、一貫することと、自信を持つことです。
突っ込まれるたびに理由が微妙に振れるようではダメです。
動くモノができれば、技術的な部分とは全く別の要因でブレイクする可能性だってあります。
設計が古いとコケにされながらも、コードをガリガリ書いたLinusにでもなった気持ちで、批判にじっと耐えて、家に帰ってコードを書きましょう。


(既存のモノは)遅いので新しいモノを作ります、という論理

定量的に速くなる根拠を示せれば何の問題もないので、ここでは定量的に示せない場合を考えます。
新しいモノが速くなる根拠を(嘘でもいいので)示さないと、この戦略はうまく行きません。

次の3つが代表的な戦略です。

ところで、過去に同じようなソフトが存在したにも関わらず、なぜか突然ブレイクしてしまうソフトは多々あります。
むしろ、過去に似たソフトが無かったソフトの方が珍しいぐらいなので、成功したソフトには、過去に失敗したソフトと何が違うのかについて理由がつけられます。
この時、次の3つが大きな要因として語られます(真実とは限らない)。


これらは成功してから過去に遡って作られる理由です。これらを理由に新しいモノを作るという論理は、微妙に論理が錯綜しています。しかし、そんな迷いを持ってはいけません。

「既存のモノは遅いので新しいモノを作ります」という論理はオーソドックな戦略で、かつソフトウェアの歴史の事例を多く知っているほど強いので、じじい向きの戦略と言えます。
実装力や実績があることをアピールできれば、戦略の成功確率は上がります。


(既存のモノは)複雑すぎるのでシンプルな新しいモノを作ります、という論理

上とほぼ同じ戦略を使います。
未踏に限らず、この理由で新たに作られるソフトは後を絶ちません。

「シンプルにしてもできることが少なくなるだけでは?」、とか、「複雑であることにはそれなりに理由があるのでは?」、という指摘が予想されます。
それぞれ正しい指摘です。
新しいモノを作っても、本当にシンプルであり続けられるのかと言うと、皮肉なことに、普及しなければシンプルなままでいられて、成功して普及すると、いずれ複雑化して遅くなっていくのが定めです。

既存のものが複雑すぎることを、新しいモノを作る理由に挙げることは、根拠として弱いことは否めません。
では、新しいモノを作る意味は無いのか、と言うとそんなことはありません。
自分が最後のソフトを作るという驕りが間違いであって、自分はソフトの進化の流れの中にいる、ただの漂流者だと思えば、こんなことは普通のことです。


(既存のモノと違って)XMLを使って拡張可能にします、という論理

キックオフミーティングでこの論理を持ち出して玉砕した若者がいました。
この論理で乗り切るのは相当難易度が高いので、お薦めできません。
未踏性がXMLによる拡張性にしか無い場合、「ドメインを絞り込んだスキーマ設計うんぬん」などのもっともらしいフレーズと、規格名と固有名詞(幸いなことにXML周りには膨大な数の規格があります)で相手を圧倒してください。

XMLの部分を、「プラグインアーキテクチャ」や「組み込み言語」に置き換えても、同じ理屈です。
拡張可能性に未踏性を求める戦略は高難易度ですが、敢えて成功のコツを挙げると次のようになります。


(既存のモノでは)できないので新しいモノを作ります、という論理

既存のソフトで実現が難しい具体例や、既存のソフトではできないことの具体例を挙げて、新しいソフトでの解決案を示す戦略です。
「問題先にありき」です。これに新しいソフトで解決策を示すのは、最も正しい戦略です。
ある意味、この戦略以外は、こじつけの論理なのでは、という見方もできますが。

一方、反論を受けやすい難易度の高い戦略でもあります。
対照として挙げたソフトで実は解決策があって、「こうこうやれば簡単にできます」と指摘されると玉砕します。
知らないソフトを持ち出されて、「Aというソフトを使えばそれはできます」と指摘されても玉砕です。

かなり特殊な領域で、事実上ひとつのソフトしか無く、そのソフトを使い込んでいる自信があれば一点集中でも成功します(マイナー戦略です。これは強い)。
一般的な領域であれば、既存ソフトでできないことや使いにくい点を、複数用意しておく方が無難です。
多少反駁されても、「それは知りませんでした、情報ありがとうございました」、とあっさり流して、他の問題に話題を移しましょう。


(既存のモノは使いにくいので)ユーザビリティで差別化します、という論理

たいした未踏性が無い場合に、逃げ込みやすい論理です。
UIはソフトの中で最も自由度が高いので、誰もやっていないこと(=未踏ですね)を見つけるのが比較的容易です(実世界インターフェースを組み合わせると、誰も試していないことを見つける幅が広がります)。

「UIを変えただけで未踏なのか」、という厳しい突っ込みが予想されます。
世の中の大半のソフトは使いにくい、と言うのが定説なので、新しいモノを作る理由としては充分なのではないでしょうか。

一方、既存のソフトが使いにくいのが真だとしても、なぜ新しく作ると使いやすくなるのか、を示せないと窮地に立たされます。
芸術系のバックグラウンドがある場合、次の戦略との合わせ技が使えます。
そういう素養が無い場合でも、ユーザビリティには様々な研究成果があります。
ひとつひとつを取り上げると、さしたる理論には見えませんが、沢山援用するとそれっぽくなるので、理論武装をすることが成功の鍵です。


(既存のモノは)恰好悪いので新しいモノを作ります、という論理

かなりの開き直り系ですが、ある意味、反論不能なので、かなり強力な戦略です。
この戦略を成功させるためには、芸術系(メディアアート系の固有名詞をプレゼンに忍び込ませる)や、認知心理学(ゲシュタルトやアフォーダンス辺りの用語を、こんなの知ってて当然でしょ、と言った感じで使う)のバックグラウンドが無いと厳しいかもしれません。

この辺のバックグラウンドがあると、理系の偉い人のコンプレックスを刺激するのか、かなり成功する戦略のようです。

一方、根っからの理系人間を自認する人には使えない技です。
「定量的に評価不能じゃないですか」、と突っ込まれて黙ってしまったら負けです。
評価不能と突っ込まれても、「ぼくが恰好悪いと感じるだけで、作る理由としては充分じゃないですか」、と開き直ってください。
posted at 053140腱 on 2004綛0708 by inoue - Category: General

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